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マニアとファンの間で

「すべてのジャンルはマニアが潰す」という言葉をつい最近知った。

その言葉を聞いた瞬間、妙に納得してしまった。そうか、最近自分が心に抱えていたモヤはこれか、と。

「いいな」と興味を持つ段階が、ニワカ。ニワカからステップアップしたものがファン。ファン歴が長くなり、威厳がつき始めるとマニアとなるピラミッド構造がある…といった解説の中で出てきたフレーズが「すべてのジャンルはマニアが潰す」だった。

 

これは特定の分野だけではなく、世の中のあらゆる場面に合う話だと思った。分かり易いところではアーティストやアイドルの追っかけ、マニアックな趣味仲間。身近なところでは職場の上下関係、ご近所同士の付き合いなども似たようなものかもしれない。

 

マニアはニワカを受け入れない。そんな場面は私も何度も見聞きしただけではなく、実際に自分の身にもよく降りかかった。

誰でも最初からマニアだったわけではないのに、マニアは自分もかつてはニワカだったことを忘れてしまいがち。そしてマニアまで登り詰めるまでには年数も努力も人一倍してきた。あぁ、そうか。自分も被害者側のニワカだと思っていたけれど、場所が変われば自分もまたニワカに理解のない加害者側のマニアでもあった。

 

誰よりも時間も労力もかけて手に入れたマニアという立ち位置だった。それ故に、軽い気持ちで近づいては素早く離れていくニワカに苛立つことも多々あった。片足突っ込んだ程度のニワカが饒舌に語ることにも良い気分にはならなかった。「よく知りもしないくせに…」と自分が追い抜かれた事実を悔しがりながら。

 

次第にマニアの中でしか通じない言語が形成されてしまえば、もうニワカは完全にシャットアウト。マニアの自慢が続く限り、新規参入なんてできやしないシステム。別の世界へ移るしかなくなる。そして移った先のその世界でも同じことは繰り返され…

 

ニワカからファンになりマニアを目指していたら、マニアになる前に世界自体が消えてしまった。

マニアを極めたら何ができるようになるだろう…と夢を膨らませていたが、夢がカタチになる前に夢は夢のままになった。

やっとの思いでニワカからファンになれた時、マニアたちとの間には越えられない厚い壁があった。簡単に入ってこれる世界じゃない、という空気が充満していた。

それでもマニア目指して、何とかその入口のドアノブを掴める場所まで登った。そのドアノブが回ったところでドア自体が消滅した。雲の上で逃げ切ったマニアたちが安堵してる姿が見えた気がした。その安堵している姿の中の一人が自分自身でもあるというのに。

そう、いつだってこのパターン。あと少しというところで梯子は外される。「まだまだ努力が足りないからだよ」と笑われながら。

 

たとえ目指したその世界が消えてしまったとしても、マニアに近づこうとした軌跡は自分の中から消えることはない。

だから、たとえマニアとファンの間の立ち位置で終わったとしても、また何度でも立ち上がれる…そう信じてないと、何もかもが馬鹿馬鹿しくなってしまう。そう、何もかもが。