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アイドルとの距離感

どちらかというと追っかけ体質の私。

好きになったミュージシャンやアーティストには、どこまでも追いかけていきたい!と熱心になるタイプで。

ライブツアーがあれば、北へ南へ東へ西へと全国を駆け巡り、

ファンミーティングがあれば、予定を調整してでも駆けつけて、

ファンレターも熱心に書いては送り、

少しでもステージの上の憧れの人に近づきたいという気持ちだけで追いかけていた。

 

メジャーなアーティストの一方通行で反応の返ってこないライブに物足りなさを感じて、

ライブハウスでファンにCDを手売りするような会いに行けるミュージシャンを追いかけるようになったこともあった。

 

ホール級のメジャーアーティストにしてもライブハウスのアットホームなミュージシャンにしても、ステージに立つ存在というのはやはり特別で

客席にいる自分はどんなに前列で目立っていたとしても、ステージ上の世界との接点はないのだと自覚していた。

 

手が届きそうで届かない。

この距離感があるから、熱心に追いかけていられる。

 

何かの間違いで、うっかりステージから降りたアイドルと同じスペースで親しげに話してしまったら、

それはもう、アイドルとファンではなくて、社会人としての通常の人間関係になる。

通常の人間関係となったら、それは憧れの夢の世界とは切り離された、

現実味を帯びた自分の世界の一部。

親しくなれて嬉しいと思える人もいれば、興ざめすることもある。それは通常の人付き合いと同じ。

 

ステージの上で輝いている姿の素顔なんて、見ないままでもよかったのかもしれない。

…なんて思うのは、知ってしまったからこそ思うことなのかもしれない。

知ったからといって幻滅したわけでもないけれど、夢から覚めてしまったような気がしたのは確かで。

 

幸か不幸か、私は憧れた人とはほぼ一対一で話せる機会に恵まれる。

そのうちの半分とは、顔見知りになることもある。

でも、全ての憧れの人と知り合う必要はないと近頃はしみじみと思う。

 

憧れは憧れのままで。

夢は夢のままで。

ファンタジーを、壊さない方が幸せでいられることもある。

今はまだ憧れの存在のままであるアイドルには、

このままステージから降りた姿を知らないままでいたい。

ずっと夢だけを、見させてほしい。そう願ってしまう。